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2009年6月26日 (金)

伊勢神宮の外宮と星辰信仰

伊勢神宮は内宮と外宮がある。なんなんだろう?という話はずっとあって、神主家も内宮派と外宮派の対立があって

渡会氏による外宮優位の伊勢神道なんてものも生まれます。

普通は皇祖神の天照大神を祀る内宮が上位であるはずですが、同列と思えるくらいに外宮が重視されているのです。

「外宮先祭」という言葉があり、重要な祭りは全てまず外宮からという伝統があるそうです。


この外宮に祀られる豊受大神とは何なの?という話ですが、陰陽道や星辰信仰から読み解こうという説を知っておもしろく思った。

民俗学者の吉野裕子氏の著書『神々の誕生』(岩波書店)、『隠された神々』(講談社現代新書)で、伊勢信仰には陰陽五行説、特に太一信仰が大きく関わってると指摘する。そして内宮は太一(=北極星を神格化した天帝)、外宮は北斗七星を祀っているという。

一見神社内に太一の影は無いが、伊勢神宮以外の伊勢周辺には田植え祭でも神社の祭礼でも太一の幟が舞う。伊勢神宮に関しても、遷宮の際の木を運ぶ際には太一の木札が貼られ、無関係ではない。

さらにこれを受けて、青ヶ島の民間信仰研究などで知られる菅田正昭氏が、このあたりを日本神話から更に突っ込んだ解釈を述べている。


外宮のトヨウケあるいはトユケの神を、北斗七星の第六星のわきにある「輔星」とする説である。(和名でソヘボシという)

トユケの神は『古事記』では高天原から天降った神ということしか分からないが、『丹後国風土記』にはこの神の出自が詳しく載っているそうである。それによると

「丹後国丹波郡の比治山の山頂に真奈井と呼ばれる泉があった。ある日そこへ8人の天女が水浴をするため舞い降りた。

そこに和奈佐という名の老夫婦があらわれて、一人の天女の羽衣を隠し、天に帰れなくなった天女を養女にして10年以上一緒に生活した。

その間、天女は自分の口で穀物を噛み砕いて唾液を混ぜて醸した、万病に効く薬を作って老夫婦を富ませた。

しかし、のちに家を追われ、竹野郡の船木の里の奈具の村に留まった。これが竹野郡の奈具社の豊宇賀能売命である」


ここではトウケの神は、元々天女で一人地上に残った者であるという。

さらに『止由気儀式帳』(804)によれば、このトユケの神が、丹波国から伊勢に迎えられたのであるという。


この8人天女、7人の帰った天女はいかにも北斗七星っぽい感じではある。

では8番目の天女であるトユケは一体?となると、それは輔星であろうという。

「北斗七星はこの星を入れると八個で、陰陽道ではこの星を重視し、金輪星といって信仰の対象としている」(吉野裕子『隠された神々』)


この金輪星=ソヘボシが8人の天女の一番下の妹トユケであるというのだ。

これではトユケは北斗七星の下の存在になってしまうが、地球の回転軸が逆の方向に触れるとちょうどこの輔星が未来の北極星になるらしい。つまり未来の天帝=太一の座にトユケが座るのである。

つまり、太一信仰が隠れた伊勢の信仰において、トユケの神は、仏教で言う弥勒菩薩のような存在として位置付けられているのではないかと。


なんという新しい視点だ!おもしろい。


『止由気儀式帳』の書かれた時代は陰陽道盛んな時期であり、この時期に北極星信仰を取り入れた陰陽道理論で伊勢の信仰が整えられたということは十分ありうるように思う。

その中で、7人の天女と未来の天帝となるソヘボシ=トユケの伝説を踏まえれば、現太一と未来の太一という理論はおおいに在りうるだろう。

伊勢の遷宮という特異な神事も、そういう星の循環理論の意味だとすれば非常にすっきりするかもしれない。

吉野裕子氏は内宮=太一、外宮=北斗七星説をとなえ、菅田正昭氏はトユケの話から外宮=太一説をとなえる。

私の考えだと、両者の折衷(というか菅田説か)で、もっとシンプルに内宮=太一、外宮=未来の太一ってのはどうだろう。


もっといえば両者が互いに太一の地位を譲り合うような循環理論が遷宮にはそもそもあったのかもしれない。なぜ20年ごとに立て替える必要があるのか?

持統天皇の時代に第一回が行われた遷宮。これも呪術的意味があると考えたほうがいいと思うが、伊勢の内宮外宮に太一の交代という理論があったとすると、関係ある可能性もあるのではないか。

あれは太一の地位が、内宮と外宮の間で交代することを示す儀式なのかもしれない。


古代盛んだった陰陽道や星辰信仰というエッセンス、当然伊勢の信仰や儀式の成り立ちに関与していないとは考えにくいが、ほとんどそのあたりはスルーされてきているように思う。

吉野氏の着眼点は意外と鋭いのではないでしょうか。

神々の誕生—易・五行と日本の神々

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隠された神々—古代信仰と陰陽五行

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