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2009年8月17日 (月)

観音菩薩は中国では女性になっている

中国の民間信仰はいろいろ興味深いです。

こんど道教の美術展(今東京でやってるやつが次大阪でやる)やるので、道教とか民間信仰についていろいろ知りたいなあとか最近おもっとります。


わりとでも日本の神社仏閣でも、中国の意匠や習合した道教系のものは見れます。

例えば、布袋さん。布袋は本来中国のお坊さんですが、民間信仰では弥勒菩薩とイコールとされます。日本では弥勒菩薩像つって布袋が出てくるなんて意味不明ですが、あっちでは弥勒菩薩ってのはでっぷりお腹の布袋の姿で造形される。

こういう弥勒布袋は、禅宗の黄檗宗の寺院ではわりと見ることができる。

黄檗宗は、江戸期に隠元禅師が日本に招かれて、本場中国の臨在禅を伝えたものですが、当時の鎖国で珍しいものに飢えてた日本人に、禅と共に伝えた当時の中国文化がもてはやされ、粋な知識人の間で黄檗文化が大流行します。

黄檗宗の総本山の京都・万福寺にいけばでっかい布袋さんが祀られていますが、これは弥勒布袋です。


黄檗宗のお寺は寺の建築様式も中国っぽい(黄檗文化的)のもおもしろいですが、中味もいろいろ変わったものあって大変おもしろいです。

大阪は天王寺区勝山にある黄檗宗の清寿寺は江戸時代からあるお寺で、通称南京寺と言われたお寺です。江戸時代の観光画にも描かれています。

ここにはなんと、関帝廟がある!

四天王寺からも近いんで、いっぺんいってきたことあるのですが、立派な関帝廟があっておどろいた。

なんでも日本の寺であると同時に中国商人などの信仰を集めてきたそうで、それゆえに寄付により関帝廟が作られたのでしょうかね。

普通にお墓も経営してたり、寄進を募集してたりするのですが、ちらっと見ると、日本人と中国人が半々くらいかなって感じでした。

日本人だけでなく中国人からも現在でも信仰されているというのがビックリした。

http://www.kanteibyo.org/


あと、またご近所話ですいませんが、四天王寺のそばの堀越神社に行ってみると、いくつか神を祀った祠がありますが、ここにも道教との習合を見れておもしろかったです。

ここは四天王寺七宮のひとつとされ、聖徳太子が四天王寺を建立した際に、守護として同時に作った神社ということです。

http://www.horikoshijinja.or.jp/

さてここに見られる集合文化。


Photobucket


Photobucket


「鎮宅さん」として親しまれる太上神仙鎮宅七十二霊符尊神。道教の星辰の神々です。

奈良朝陰陽寮で発符していた頃の流れを組むもののようです。

http://www.horikoshijinja.or.jp/jinja/kamisama/chintaku-san/

「七夕には星祭を七日七夜行い七月七日の結願の日に大真西王母須勢理姫命をお招きして星霊の力により生命の復活再生を希う繁昌祭を行います。」とのことですが、

西王母と日本神話の須勢理姫命を習合させる思想があるのです。

なにがおどろいたって、この手の星辰信仰や道教と神道の集合は江戸期までは盛んに行われて対応関係が設定されてましたが、廃仏毀釈や国家神道の時代に全て廃れたと思っていたのです。こんなのが、しかも大阪のど真ん中の市街地で残るというのにおどろいた。

ここでは星辰達の親玉は西王母とするようですが、現在の我々が思っている以上にかつては道教は陰陽道を通して普通にそこいらに普通にあったわけです。


ですが、日本に伝わってる道教文化は断片的であるのは否めない。

象徴的なものを挙げると、まず律令制確立などに伴う中国文化の流入による道教思想の流入。陰陽道もこの系譜でしょう。遣唐使船がいろいろ伝えたのでしょう。空海らが遣唐使船で伝えた密教はその一部であって、密教だけが伝わったわけではないのだと思います。

この時期には神道の祭祀様式もいろいろと改革があったようですし、中国様はこの時代多く入りこんでいるのだと思います。

もうひとつは先にあげた江戸期の黄檗文化を通しての移入です。

後者はあくまで仏教なので、あまり道教道教した習俗はあんまり伝わってないような気もしますが(中国仏教に習合した道教的なものというのはある)。

その他常に中国との交流はほそぼそでも常にありましたから断続的な流入はあったのだと思います。



で、やっと本題ですが、そんななか日本にぜんぜん伝わってない文化として、観音菩薩の信仰がある。

いやさ、観音さんは全てを救うという菩薩ですから、転じて願い事をかなえてくれると熱い観音信仰は日本にもある。それは中国でもどこでも各国にもある。しかし中国風の観音信仰が日本には伝わっていない。

それは、「観音は女性」という思想。

なんじゃそらって感じですが、観音はもはや半ば道教に取り入れられ、元々お姫様というふうになっており、ほぼ常識的に中国では女性ってことになってしまっている。

本来仏教説話では当然男性だったはずですが、なぜかこんなことに。布袋弥勒と同じようなことになっているわけです。


日本でも女性的というか中性的に観音像を描くという例はあります。隠れキリシタンが偽装に使ったマリア観音なんてのもその系譜でしょう。

けど、中性的という感じだし、女性「的」であって明確にお姫様として女性化して描いてる例はまず見かけない。

ところが中国では観音菩薩は完璧に女性という思想が存在するのです。


平凡社『中国の神さま』(二階堂善弘著)によれば、現在観音は人気でドラマや映画にも頻出しますが、間違い無く女性が演じるそうです。

中国では古くは男性だったものの、唐代ではすでに女性として描かれるようになっていったそうで、その歴史は長い。

宋末元始の時代には観音菩薩の伝記が作為されるようになり、それによれば

「観音は西方のある王国の妙荘王の第三女で、名を妙善といった。妙善王女が成長した後、父の妙荘王は結婚を勧めるが、王女はこれを断り尼になるという。

父の王は怒って妙善を追い出す。後に妙荘王は病を得て、重体となる。

出家して成道し香山仙長となった妙善は、自らの眼と手を犠牲にして父王を助ける。失われた手と眼は復活し、それも一つでなく続々と生じ、ついに千手千眼となった」

…という由来話が創作されます。これを元に数々の文学作品などに観音は女性として活躍するそうです。西遊記などでも大活躍しています。


中国のこの手の神々はなんでもかんでも由来話創作していきますが、それを仏教の菩薩にまで広げるか~と驚きです。

そういえば、日本で作られる西遊記のドラマでは夏目雅子以来、三蔵法師はいつも女性が演じます。

これ中国の掲示板とか見ると、あっちの子ら気に入らないようで、「西遊記を汚された!」と激怒よくしています。

でも日本の場合、これ女性としてるわけじゃなく、神々しい女と見まごうばかりの美しい僧侶という意味あいで、女性が男性演じてるって設定ですよね。(要するに日本の女神崇拝文化みたいなもんがバックにあるのかもしれない。見るからに強そうなより、そうじゃないほうが逆に底知れぬ力を観ずるというのもありそう)

観音の女性化はそれ以上のむちゃくちゃじゃあなかろうか…

まあインドやチベットなど、あと東南アジアの仏像は、男女がはっきりしてるけど、中国や日本の仏はもはや性別超越したような性別不詳の高みの存在のように描かれるので、女性的でもいいとは思うんですけどね。

ただ性を超越した存在とし中性的という描き方と、由来創作してお姫様と定義するのは意味合いが違うと思うのだ。

(日本の如来像などに女性形が無いのは、女性蔑視でも、男性優位でもなんでもなく、仏を超越者として捉える発想でしょう)



あと気になったのが、今、奈良国立博物館の『聖地寧波』展やってて、目玉として、泉湧寺の楊貴妃観音が来るというのがあります。

寧波(ニンポー)展で招かれるとおりで、この像は、当時の中国で制作された観音像です。

中国・南宋時代の作で、日本仏教は当時の南宋と非常に交流があり、多くを南宋から伝えました。あちらの仏師に依頼して作らせた像と言われています。

現在、楊貴妃観音は美麗な作りではありますが、ヒゲも描かれ、あくまで男性の菩薩として表現されています。

髭ではない!って意見もありますが、信仰としてはまあそれもありでしょうけど、明らかにヒゲを想定して描いていることは間違い無いと思います。

さてここで問題は、このヒゲ、もともとあったのであろうか?

中国で観音像を制作依頼するとするならば、それは女性的イメージがあってもおかしくない。

でも服装が胸はだけてるようなのだし、胸が膨らんでるとかってこともないし、やっぱ男としてそもそも作ってるのかなあ。

しかし当時の中国の古い観音像を見ると、プチパイである。中世的で女なのかなんだかよくわからないものが多いと思う。

南宋時代ではまだ女性化は進みきっていないと思うので、単に中世的な男性像と考えるのがやはり妥当なのかな。

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