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2009年11月27日 (金)

サントリーミュージアム天保山「クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」

サントリーという会社は有名企業ですが、あえて非上場で創業一家の方針で長期的展望に基づいた経営をするという特異な経営スタイルを取ってきた会社です。

結果として20年以上も開発にかかりながら最近ついに一般販売にこぎつけた「青いバラ」の開発のようなことができる会社でありました。青いバラってのは欧米ではありえないことの象徴であるそうで、しかしだからこそ佐治敬三は「やってみなはれ」とゴーサインを出し、結果としてサントリーのバイオ部門園芸部門が結果を出し、ビジネスとして成り立つことになったわけです。

しかし上場、キリンとの統合計画を現社長が進めており、このようなサントリーならではの青いバラの経営は危機に瀕している。「普通の会社」になってしまうのではないかと懸念されるわけです。

昨今、本来出資者であり会社に責任も持つはずの株主が、責任は持たず短期的ゼニだけ要求するという歪な資本主義が蔓延しています。株券、株式というのは本来出資のシステムであるはずが、投機になってしまっている結果で、これは本来歪みでしかないのですが、これでは短期的視野でしか経営はできません。それに対する別の道という意味でサントリーの経営は評価していたので、時代の要請なのでしょうが大変残念です。

こういうサントリーですから、メセナ活動も活発で、芸術分野への貢献も顕著でした。その代表格がサントリーミュージアム。天保山の海遊館の隣にあるサントリーミュージアム天保山は、非常にいい雰囲気の美術館で、近代・現代芸術を中心に頑張ってきたのですが、これまた2010年末での閉館を先ごろ発表されました。やはり上場&キリンとの統合というのは明言しないものの関係はあるのでしょう。

ここは世界最大級の立体映像シアター、IMAXシアターもあり、すごい映像を日々上映しているのですが、これも閉鎖の予定で、大阪の文化にとって非常に大きな損失に思われます。

この報道に対し、アサヒビールが運営する京都と大阪の県境、天王山にあるアサヒビール大山崎山荘美術館について「撤退は考えていない。メセナは重要なもの」とのコメントを出しているようで、アサヒビールは素晴らしい。



さて、この11月で15周年を迎えたサントリーミュージアム天保山、現在開催中の「クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」を見てきました。

http://www.suntory.co.jp/culture/smt/gallery/index.html

駅とかにでっかいポスターでクリムトの『パラス・アテナ』が貼られてるのを見て知りました。

最近出たクリムトの本読んで、自分の中でクリムトブームが来てたとこなので、なんとタイムリー!と行って来たわけです。

クリムトと、シーレ、そしてウィーン分離派の流れを組む画家らの絵が大集結。ウィーンミュージアム所蔵の品々が大挙来ております。

19世紀末、世紀末の空気を味わえ!


クリムトというと装飾的なキンピカで平面的な画という印象ですが、初期はルネサンス的な古典的画を描きます。それらもたくさん来ておりまして、クリムトの装飾画的な絵は、超絶的な古典的技法を極めた上にある表現ということがよくわかります。

しかし古典的技法によるものの、単なる古典的リアル表現ではない。クリムト特有の「毒」が明らかにその中にも垣間見える。なんだか不穏な不安定な妖しい魅力が溢れており、ルネサンスのどっしりとした安定感とは違う現代的鋭さがそこには確かにあるように思います。


先日、アンドレ・ブルトンの『魔術的芸術』の書評を書きましたが、まさにクリムトはブルトンのいう『魔術的芸術』そのものであり、クリムトも明らかに意図的に呪術的意匠を入れています。

クリムトが古代エジプトの意匠やら、イスラム装飾やら西欧的でない意匠に刺激を受けて取り入れているというのはよく言われるところです。狩野派?と思わせるような日本意匠も思いっきり取り入れたものがあります。

この傾向は、初期の古典的画を描いていた頃から実はあって、ウィーン美術史美術館の壁画装飾を一部手がけているのですが、そこには左右にパラス・アテナと、エジプトの女神が描かれている。(見たい人はウィーンまで行こう!)

古典的画題といえばキリスト教の説教臭い美術を描くものでしょうが、そうでなくキリスト教に封じられたギリシャの女神を描き、さらにエジプトの女神を描くというのは、魔術的芸術の傾向が顕著でしょう。

この時点ではあくまで古典的な画風のアテナなわけですが、保守的なウィーン美術家組合を脱会、ウィーン分離派を結成し初代会長に就くと、再びアテナを描きます。これが今回ポスターになっている『パラス・アテナ』。

衣装の大まかな構成こそウィーン美術史美術館のパラス・アテナと共通しているのですが、凛々しく美しい女人のウィーン美術史美術館壁画に比べると、このパラス・アテナは異様。青白い肌に青白く濁ったような瞳。鱗状の前掛けに金色の兜に槍。妖しい妖気に満ち満ちています。

この画は守旧派芸術界への宣戦布告の絵とされ、戦いを司る女神であるパラス・アテナを自分たちの象徴としてシンボリックに描いたといわれます。ウィーン分離派の守り神なわけです。


この妖しいパラス・アテナだけでなく、古典風の時代から一貫してクリムトは呪術意匠を好んで描いている。ホルスの眼のようなものが描かれる例がたくさんあるのもそうですが、常にそういうのが好まれているように思う。パラス・アテナの鱗もそうだけど、蛇もやたら描かれる。

言ってみれば、非キリスト的意匠といっていい。時代が時代なら魔女裁判ノリで火あぶり的な意匠です。そういう意味で、これはブルトンの魔術的芸術の典型例なのだろうと思いました。

『寓話』というイソップ童話を描いた絵にしても、鳥が咥えたカエルとか、牙をむいたキツネとか、いちいち緊張感とおどろおどろしさを孕んでいる。真中に美しい白い女性(女神?)がいるが、牧歌的な絵には到底見えず、キツネだカエルの死体だと周囲のせいで魔女?とでも思いたくなる。たぶんキレイだけどこれ毒婦じゃろな…と思わせる(笑

今回は来てないけど『水蛇(シーサーペント)』シリーズ、『水の精(セイレーン)』にしてもそうだけど、彼は妖怪とか古代の廃れた神々だの、基本そういう非キリスト画を好んでいる。そういう意味でもブルトンの価値観に合致しているだろう。

(どうでもいいけど、水蛇IIの絵を部屋に飾ってます。凄くコケティッシュで色っぽい。たぶん毒婦だけど!)


自分はクリムトの魅力はこの妖しさだと思います。装飾的な技法よりそっちじゃないかなと。

装飾的な技法は東洋や古代の意匠をという意味であって、この非キリスト文脈の上の必然としてあるのではないか。

つまり、古代ギリシャや古代ローマの文化復古を目指したルネサンスと同じベクトルにクリムトはあるのだろうと思います。

初期の古典風の画風のときからミケランジェロ?みたいなルネサンス傾向が見られましたが、これは彼の一生を通して一貫したベクトルであろうと思います。

19世紀末、一人ルネサンスをやっていたのが、実はクリムトという人なのではないかと思うわけです。



一方、今回クリムトと並んで展覧会題名になってるシーレですが、クリムトが分離派でやりだした装飾的、抽象的な傾向に同調する人ではあるけれど、それはクリムトの本質ではないと考える自分としては、クリムトとシーレは盟友ではあっても、まったく別物でひとくくりにするようなもんではないと思うのです。(シーレはシーレで別の意味で凄さは分かるんですけどね)

今展覧会では、クリムト・シーレに続くウィーン世紀末の分離派系の装飾的、抽象的なアーティスト作品が多く集まっていますが、これらはシーレの流れにはあっても、クリムトはこれらとはかなり異質だと思うわけです。

クリムト晩期の装飾的、抽象的な絵は、確かに表層的にはこれらポスターチックな絵と流れを一にするように思えますが、クリムトのその本質はルネサンスであると思いますので、その画題という意味においては全くの異物に思えます。

19世紀末、近代のセンスでひとりルネサンスに挑戦してみていたというのが、クリムトの本質で、その東洋趣味的な部分もまた、アテナという古代の女神を持ち出し蛇を描き妖怪を描くように、非キリスト教文明への憧憬といったものでり、ある意味古典志向=ルネサンス的ベクトルの元行われたのではないでしょうか。


クリムトの妖気は、実は非キリスト文明、それ以前の文明という、ルネサンス的意図であり、魔術的芸術そのものというのが私の考えです。

ですから、その妖気のように思えるそれそのものが、近代ではない古代の息吹であり、崇高なものなのであると思えます。

そうやって見ると、クリムトの絵は単に悪趣味な奇をてらった絵なんかでなく、むしろその妖気にこそ崇高な宗教画の赴きさえ感じられるわけです。


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文中で少し触れました最近出たクリムト本で、収録画も解説もすばらしかった本がコレ!クリムト入門にお薦めできる。

クリムト 金色の交響曲 (Shotor Museum)

クリムト 金色の交響曲 (Shotor Museum)

あとは分冊百科系のクリムトの号なんかを押さえると、わりとコアな絵まで押さえれていいかも。

壁画絵とか美術展では見れないですからね…

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